家を出ると、
階段の踊り場に菊地さんの姿はなかった。
微かに残るタバコの香りがたった今までここに彼がいたことを物語っている。
車が見えてくると
「まちくたびれたよー」
燐が、
後部座席の窓から顔を覗かせていた。
ガムを膨らませている。
ユウは、助手席に移ったようだ。
「いいか。あの銀髪の挑発には乗るな」
カスミに耳打ちすると、
「あたしに指図しないで」
小声で返された。
……かわいくねえ。
「俺は君のことを思って――」
「さっすが。お節介なオカン」
かわいくねえ……!
ドアをあけ、
カスミが車に乗り込んだあと
俺も続いて入り、ドアを閉めた。


