総長さんが甘やかしてくる③



「話してみると、いいやつだね」


いいやつ、と言われてもピンとこなかった。


「喧嘩っぱやいなんて嘘じゃないか」

「売られたら……即買うがな」

「でもさ。この学校のやつ誰も殴ったことないだろ。ちゃんと、ゴミはゴミ箱に捨てるしな」

「それは当たり前だろう」

「はは。やっぱりそういうところに出るよね、育ちがいいと」


稔は、俺の家柄を知っていた。


「ごめん。実は、春先にランニングしてたとき、たまたま高清水の姿を見かけて。気になって、あとをつけたんだ」


――高清水 幻(たかしみず まほろ)


それが、当時の俺の名だった。


名家で生まれ育った俺は

無駄に広い屋敷にひっそりと身を隠すように生きていた。


黒梦とつるむ時間だけは、その環境から抜け出せていた。


俺の遅刻、早退、理由もない欠席を問い詰められなかった理由は、そこにあった。


教師に。学校に、俺の家からの大きな圧力がかけられていたのだ。


「なあ、高清水」

「なんだ」

「せっかく高校生なんだし青春しよーぜ。俺とこの夏は思い出作ろう!」