「この前は…
 ありがとうございました」

「・・・え?」


会社のエントランスへと場所を変え
対面する椅子へとお互い腰を掛けると
先に発言したのは早乙女さん。

まさかその一声がお礼の言葉とは
思いも寄らなかったけれど…


「荒れていたジンくんに
 私の事を言ってくれた事…
 嬉しかった」

「早乙女さん…」

「あんな彼を見るのは初めてで…
 だから、本当はとても怖かったの。
 声を掛けるどころか
 近付く事も…出来なかったから」


いつもの喧嘩腰な態度とは一変。
今日はヤケに落ち着いていて静かで穏やかだ。
きっとそれぐらい
あのときの煌月が怖かったんだろう。
恋の力は偉大だな…


「でも、もう大丈夫でしょ?
 打ち解けたんじゃない?」

「うん…おかげ様で!」


そう言いながら
彼女は照れた様子で
頬を赤らめている。

最後に見た2人は
抱きしめ合っていた…

そのとききっと
お互いの苦しみや悲しみを分かち合い
理解し…
認め合ったんだと
このコを見て、わかった。


「そう…」


素直に嬉しい。
支え合ってほしいって思う。