「会場に落とし物がなかったか連絡してみるから
 お前は薬を飲め。
 水、置いておく」


珍しく優しすぎるぞ、煌月。
弱ってる女には“男”が発揮されるんだな。


抗不整脈薬を内服し
とにかく黙って微動だにせずいると
少しだけ落ち着いていくのを感じた。


「鍵、見つかったって。
 明日取りに行くって伝えたから安心しな」

「んー…さんきゅー…」

「…寝るならベッド使っていいから。
 俺はソファで寝る」

「大丈夫―
 アタシがココで寝るから
 アンタは自分のベッド使いなー
 そしておやすみー」


身体が怠い。
なんだか疲れた。
そして眠い。

せっかく脈も落ち着いたし
このまま寝落ちしたいなって思うより先に
ゴロンとソファに横になり
目を閉じた。


「お前なぁ
 もう少し女って自覚を持てよ」

「自覚あるある」

「いや、ねぇだろ。
 …ったく、緊張感のねぇ女。
 この貸しはデカイからな」


なんかブツブツ独り言が耳に入ってくるけど
よくわかりません。

睡魔に飲み込まれる前に
フワッと香る柔軟剤が鼻をかすめ
何かが体を包んでくれる感覚だけわかった―――