「よ、良いお味です…」

「無理しないで大丈夫よ」


アタシが飲めないのを悟っているらしく
優しい笑顔を向けてくれる吹雪さん。

アナタのために
もっとワインの良さを勉強します。
コレじゃぁせっかく誘ってくれたのに
失礼だなと感じます…はい。


「ワインは辛みや渋みあって独特だから
 飲めない人が多いから大丈夫。
 アルトだって飲めないのよ」

「…そうなんですか」


陽向さんが…飲めなかったんだ。
アタシが知ってた頃のあの人は
とてもお酒が強かった。
一緒に飲みに行っても
酔ってる姿を見た事なかったくらい。

だけど…
ワインが飲めなかった事は知らなかった。

この人はそれを知っていた…


「アルト、お酒強いんだけどね。
 ワインだけはすごく酔っ払って
 毎回二日酔いだったのよ。
 それほど合わなかったのね」


なんとなく
それ以上は聞きたくなかった。
アタシの知らない陽向さんを
この人はよく知ってる。

アタシ達が付き合ってた事は…
本当に事実(ほんとう)だった?
なんかそれすら
危うくなりそうだ…。