「学校が始まったら、放課後の部活がない日は一緒に帰ったり、たまにお昼も過ごしたり、恋人のフリのために、二人で歩く時は手を繋いだり」
具体的な内容に、少しだけ後ずさりそうになった。
そこまで、演じる必要あるのかな……?
一緒に帰ったり、お昼休みとかはいいけど……
手を繋ぐのは……少しだけ、抵抗がある。
お互い恋愛感情がないとはいえ、佐倉先輩は男の人だから……好きな人以外とそういうことはしちゃいけないって、お母さんが言ってた……。
「さっきみたいに……抱きしめることもあるかもしれない」
その一言が、私の心に待ったをかけた。
「あの……す、すみません、少しだけ考えさせてもらえませんかっ……?」
さっき抱きしめられたのは、不可抗力というか、佐倉先輩が気を使って守ってくれたもの。
なんの理由もなく抱き締め合う必要はないと思うし、しちゃいけないと思った。