「……悪い、今日は俺帰るわ。
明日また誘って」


「え、茜どうしたんだよ」
「有村くん?」



そんな声が聞こえて、驚いて振り返ったら。
ドアのところにいた私の隣に、鞄を持った茜くんが立っていた。




「茜、くん…?」

「ほら。早く帰るぞ」



茜くんはそれだけ言って、ずんずんと廊下を進んでしまう。


「あ、え、待って…!」


私は意味もわからずその背中を追いかけた。



どうしたんだろう。
なんで急に帰る気になったんだろう。

…私も一緒に、帰っていいんだろうか。




「ねえ、あの」


やっと追いついて、茜くんの顔を見上げたら。




「…昨日のやつ、また会うかもしれないだろ。
しばらく1人で帰るな」



さらりと言われたその言葉に、心臓が、何かに掴まれたみたいにぎゅうっと苦しくなって。

それから、胸の奥から、熱くて甘い何かがあふれて。



「心配、してくれてたの…?」