今日は職員室に数学のノートを提出しに行かないといけなくて。
早足で廊下を歩いていたら、前から来た人とぶつかって。



よろけた拍子にノートを落としてしまって、慌てて「ごめんなさい!」と顔を上げた。

そこにいたのが、綺麗な顔に少しだけ眉にしわを寄せた、有村くん。





「はい」



しゃがんで、私が落とした数学のノートを拾って、差し出してくれる有村くんと目が合って。




綺麗な、綺麗なダークブラウンの瞳を見つめて、3秒後。


彼の瞳の中で私の頬が、赤く染まった気がした。



ドクン、と心臓が跳ねて。

呼吸することも忘れて。



心がふわふわと浮かんで、胸がぎゅっと締め付けられて、心の奥からじわりと甘くて熱い何かが溢れてきて。



それから、





「…好き、」





気付いたら、口からこぼれていた言葉に、有村くんは驚いたようにダークブラウンの吸い込まれるような目を見張った。