「おい…っ」


入学式の日、知らない人に急に声を掛けられた。

驚いて振り返ったら、そこにいたのはすごく綺麗な男の子で。

なんだかよく分からなくて首を傾げたら、彼は少し驚いたように目を見張って。

それから少し、寂しそうに視線を落として。

「…いや、何でもない」って掴んだ手を離した。



人違いだったのかもしれない。
どうして彼が私に声を掛けたのか、それ以来彼と話すことのなかった私には分からない。






私と彼との接点は、たったそれだけ。
たったの3秒くらいの出来事。




だから、私も自分に驚いている。



「……好き、」



初めて目が合ったばかりの彼に、
こんなことを言ってしまうだなんて。