劇が終わったばかりの体育館でそんなことをしていたから、私たちはいつの間にか目立ってしまっていた。
みんなが「なに?喧嘩?」なんて囁きながらこっちを見ている。
「なに、喧嘩してるの?
…言ったよね。私、奪っちゃうよ」
にやり、と笑いながら近付いてきたのは、雪音ちゃん。
「おい、いい加減にしろよ」
茜くんが雪音ちゃんを睨んで、驚いたように怯んだ雪音ちゃんが、涙でぼやけた視界に映った。
「っ、勝手にすれば…!?」
雪音ちゃんが、キスなんてしなければ。
雪音ちゃんが、茜くんを奪おうなんて言わなければ。
……言わなければ、なんなんだろう。
好きって言ってくれないのも、桃って呼んでくれないのも、雪音ちゃんのせいじゃない。
意地を張って、驚く茜くんと雪音ちゃんを睨んで、走って体育館を出てしまった。
人気のない空き教室に入って、1人になった瞬間、後悔が襲ってくる。
「……なに、してるんだろ」



