それだけ言って、慌ただしく教室に戻って行ってしまった雪音ちゃんに呆然としていると、「……あ、」という声とともに現れたのは。




「茜く……ええ!?」




真っ白なタキシード。
片方に流した黒い前髪。
王子様姿の、茜くんだった。



「か、格好良すぎて直視できない……」



目元を手で覆いながらも、それでもやっぱり格好いい彼を見たくて、指の隙間から茜くんを覗く私。


そして、そんな私を「バカじゃないの」と呆れた目で見下す茜くん。

その蔑んだ目すらも素敵……!




「って、そうじゃなくて!
茜くん、王子様なの!?」


そう、と頷いた茜くんは、心底面倒くさそうな表情をしていた。