「茜くん!」


初めて茜くんから話しかけてくれた!
会いに行ってないのに、偶然会えた!


嬉しくて、尻尾をぶんぶん振る犬みたいに喜んでいると、茜くんは一気に面倒くさそうに顔をしかめた。



「太るぞ」


言ってることは酷いし、女の子に向かって言う言葉ではないけれど、でも。



茜くんが話しかけてくれた嬉しさの方が大きくて。
茜くんがからかってくるところも、少し距離が縮まったような気がして幸せで。

にこにこしている私を見て、茜くんは、「なんで笑ってるの」とでも言いたげな顔をしていた。



「あ、三好ちゃんじゃーん」


ひょこ、と茜くんの後ろから顔を出した要くんに、「こんにちは」と手を振る。




「いつの間に知り合ったんだよ」

「俺が声かけちゃった。三好ちゃん一生懸命で可愛いから」

「あ、そう」


ユリとスミレは、少しこっちを気にしながらも、お昼ご飯のパンを買いに混雑したレジに並びに行った。



「そうだ、茜くん」

「…」


茜くんは何も言わずに、私の方に目を向ける。
これは、話を聞いてくれる時の反応だ。