冷たいところが、好き。

ぶっきらぼうな優しさが、好き。

面倒くさそうに呆れた表情が、好き。

たまに見せる、意地悪な表情が、好き。

眉を下げて困ったように笑う、その顔が、好き。


全部、全部。


きみのことなら全部が、好き。




あの頃も、初めて目が合ったあの日も。

きみはいつだって、私に魔法をかけてくれる。





「……負けたわ」


「え…?」




「久しぶりに再会したのに、全然覚えてねえし、うるさいし、しつこいし、面倒くさいし、アホだし、絶対好きにならないと思ったけど」




「ひ、ひどい…」




泣きそうな私に、茜くんは、目を細めて。
とびっきり愛おしい、優しい顔をして。






「俺の負けだな」



「それ、って」





「…俺の彼女になる?」




「っ、なる……!」



茜くんに、ぎゅうっと抱きついたら。

思ったよりも筋肉質なその腕は、私の背中にまわった。

大好きなきみの体温の中で、大好きなきみの声を1番近くで聞いて。




「桃」




って囁いてくれたきみを、私は一生忘れないよ。