「とりあえず、雨宿りしよう。
……俺の家すぐ近くだけど、来る?」
茜くんの言葉に、こくん、と頷いて立ち上がる。
茜くんは自分の鞄の中からブレザーを取り出して、私の肩にかけた。
「羽織ってて」
きっと、私の制服が透けていたから。
そういうさりげない優しさにも、すぐに胸がキュンとしてしまう。
茜くんは私の荷物を代わりに持ってくれて、ふたり、雨に降られながら茜くんの家に急いだ。
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「お、お邪魔します……」
初めて見た、茜くんの家。
昔のあの男の子が茜くんなのだとしたら、たしか茜くんのお父さんはお医者さんで。
さすがお医者さんの家だなぁ、と感じさせられる、大きな一軒家だった。
「親いないから気遣わなくていいよ」
そ、それはそれで別の緊張があるなぁ。



