3秒後、きみと恋がはじまる。




「……なに、思い出したの?」




眉を下げて、目を細めて。
大好きなきみは優しい顔をして、私の顔を覗き込む。




「わ、私のために……お医者さんになろうとしてたの?」




どしゃ降りの雨の中。

茜くんは、ふっと笑った。






「そうだよ」






どうして、忘れてたんだろう。



あの時は、本当に苦しくて。
今でこそ明るい性格だけれど、あの時は毎日が楽しくなくて。

だから私は、昔の記憶があまりないんだ。




辛かったことを、忘れようとしたんだろう。

幼稚園の頃のことなんて、全然覚えていない。



こんな、幸せなことがあったのに。




「まあ、俺が治す前にちゃんと元気になってて良かったけどね」




「っ、ごめ……」



忘れてて、ごめんね。

茜くんが、頑張っているきっかけが自分だったなんて。

そんなの全然、考えたこともなかった。