「もしかして……茜くんって、」
どくん、と心臓が脈打って。
ばらばらだったピースが、ひとつになった。
・
『おい…っ』
入学式の日、私の手を掴んだのは。
寂しそうに視線を落としたのはきっと、私が何も覚えていなかったから。
・
『……俺が誰だか分かってる?』
魔法にかかった、あの日。
好きだと伝えた私に言った、彼の言葉の意味は。
・
『全然丈夫じゃないだろ』
雨に濡れて帰ろうとしたあの日、私が風邪をひかないように、あんなに心配してくれた理由は。
・
「茜くん、魔法使いみたいだね!」
「またかよ」
「へ…またって?」
「いや、なんでもない」
・
『お前、さ』
『……何も覚えてない?』
・
『……そっか、覚えてないんだっけ』
『何でだろうね。当ててみれば』
茜くんが、お医者さんになりたいと思った、きっかけはー……



