「っ、おい!」
突然、後ろから手を引かれて。
その勢いでよろけた私は、その胸に倒れこんだ。
「茜、くん……」
怖いお兄さんたちを睨みつける茜くんに、彼らは怯んだように「なんだよ……行こうぜ」と去っていった。
私は怖くて、冷たくて、震えていた足から力が抜けて、しゃがみこんでしまった。
「おい、大丈夫か!?何かされたのか?」
珍しく、焦った顔をする茜くんに、ゆるゆると首を横に振る。
慌てて走って来て、くれたみたいだ。
傘をさしていない彼は、私と同じくらいびしょ濡れで。
乱れた息を整えながら、しゃがみこんで、私と目線を合わせてくれている。
「なに急に走り出してんだよ。
濡れたら風邪引くだろ」
「……」
少しでも何か喋ったら、涙が溢れてしまいそうで。
私はなにも言えずに、俯いた。



