冷たくて、ポーカーフェイスで、バカな女が嫌いで。
それでも本当はすごく優しくて、呆れたように笑う顔も好きで。
それから、それからー……。
「っ、茜、くん……」
きみのことが、大好きだった。
闇雲に走って、追いかけてくれるわけもない茜くんから逃げるように走って、もう息が苦しくて。
冷たい雨が体から体温を奪って、手先が震えていることに気づいた。
ーードンッ
誰かにぶつかってしまって、慌てて「すみません」と顔を上げる。
「痛えな…って、あれ」
「なに、かわいいじゃん」
「え、何でこんなびしょ濡れなの?大丈夫?」
「ねえ、透けてるよ?」
ニヤニヤ笑いながら迫ってくるお兄さんたちに、怖くなって後ずさる。
「や……」
「嫌って、そっちがぶつかって来たんじゃん?」
「一緒に服乾かせるところ行くー?」
じりじりと近付いてくる彼らから、じわりと後ずさるけれど。
忙しなく歩いている人たちは、誰も助けてくれない。
どうしよう……もう。
なんで、こうなるの……?



