入学式の日、私の腕を掴んだ茜くん。
きっときみは覚えていないけれど、人違いだったのだろうけれど、それでも……
あの日から、私はいつも、無意識のうちにきみを探していた。
恋というには拙すぎるけれど、きみを見つけた日はいつも、心がふわふわと明るくなった。
初めて、きみの瞳に私が映ったあの日。
目が合って1秒後、ドクンと心臓が跳ねて。
2秒後、呼吸することを忘れて。
3秒後、恋に落ちた。
胸がぎゅうっと締め付けて。
心がふわふわ、甘く浮かんで。
世界がきらりと輝いた。
きみは、まるで魔法使いみたいだったね。
そんな魔法使いみたいな彼の魔法にかかって、私のこの気持ちはやっと、ひとつの形になったように感じる。
きみが好きだって思ってからは、毎日が楽しくて。
『俺が誰だか、わかってる?』
『バカな女、嫌いだから』
きみの冷たい言葉が、頭の中に蘇る。
傘のない私を、入れてくれた茜くん。
電車で絡まれてるところを、助けてくれた茜くん。
怖くて夜中に呼び出した私を、助けに来てくれた茜くん。
京都で迷子になった私を、探し出してくれた茜くん。
きみの優しいところが、私の胸を締め付ける。



