郁人くんの腕を引いて階段を駆け下りた私の耳に、


『やっぱり付き合ってるのかなぁ』って、雪音ちゃんの声が聞こえた。



「ちょっと、桃ちゃん!」


「っ、はぁ、はぁ」



昇降口まで走って、呼吸を整える。
郁人くんは納得のいかない顔で私を見ている。


「あんなの言われたままでいいの?
本当、性格悪いなアイツ……

有村も何であんなやつと一緒にいるんだよ」



私よりも怒ってくれる郁人くんに、胸がぎゅっと締め付けた。



「……郁人くん、ありがとう。

でももう、どう頑張ったらいいか分からなくなっちゃった」


「え……有村のこと?」


「うん…」




しばらく会いにいかなかったこと、茜くんはきっと気付いてすらいない。

雪音ちゃんよりも私の味方をしてくれるなんて、思ってない。

私のこと好きになる茜くんなんて、想像もできない……。