「やっぱり桃ちゃん、櫻木くんと付き合ってるの?
修学旅行の時から仲よかったもんね!」



にこにこしながら話す雪音ちゃんに、ツンと目の奥が熱くなる。


違うのに。私が好きなのは、茜くんなのに。

どうして知ってるくせに、茜くんの前で、そんなこと言うの……。




「はぁ?瀬川ちゃんさ、性格悪すぎじゃない?」



と。隣にいた郁人くんが、いつも通り、でも怖いくらい綺麗に笑いながら、雪音ちゃんに詰め寄った。



「え、何……」


「桃ちゃんの気持ち知ってるんだよね?

このタイミングでその言葉は悪意しかないだろ」



ぐ、と眉をしかめる雪音ちゃん。

私はぐい、と郁人くんの腕を引く。



「い、いいよ!早く行こ、郁人くん」


「え、でも……」


「気にして、ないから……」



早く、ここから去りたくて。

じわりと目に浮かんだ涙を、見られたくない。


戸惑った要くんの視線も。
驚いた顔の、茜くんも。



みんなみんな、雪音ちゃんの味方な気がして、この場にいるのがいたたまれなくなった。