「まあ、俺だったら1人で運ばないで人を呼ぶし、遅れるって友達に連絡するし、もっと要領よくできるだろ、とは思うけど」


「う……」




「それでも、お前は自分のことより人のことしか考えてないからこうなったんだろ。お人好し。

……それに、すげえ練習したみたいだし」




私の手のマメや怪我を見ながらふっと笑う茜くんに、急に恥ずかしくなる。




そうなんだよ。頑張ったんだよ。


茜くんとデートしたいから、こんなに頑張ったんだよ。


決勝戦にまで、行けちゃったんだから。






「だから、いいよ。どこでも連れてってやるよ」



「っ、茜くん好き〜〜!!」



「はいはい」



今日の茜くんは、なんだかやけに優しくて。

私の荷物を持って、ゆっくり歩いて。

電車では私を座らせてくれて。

私の家まで送ってくれて。

「お大事に」って、優しい顔をした。



ねえ、茜くん。

また少し、きみのこと好きになったよ。


このまま毎日「好き」が積もって、もう、私1人じゃ抱えきれなくなりそうだなぁ。