あのゲーム、外国のゲームなので、物は投げるように置くし、客に動きがないときは、店員なのに、欠伸をし始めるし。

 うむ。
 参考にならないな……。

 ゲームを参考にしようというのが、そもそもの間違いなのだろうが。

 ホールに立ち、頭の中で仕事する自分をシミュレーションしていた芽以は振り返り、厨房に居る逸人に訊いた。

「あのー、ウェイトレスって、どんな風にしたらいいんですかね?
 なにか極意とか、気をつける点とかありますか?」
と訊いてみたのだが、ソースの味見をしていたらしい逸人は、チラ、とこちらを見たあとで、

「本を読め」
と言ってきた。

「この世の中の大抵のことは本に書いてある」

 ……この人も私レベルに駄目な人のような気がしてきた。

 ゲームに頼る店員、本に頼るシェフ。

 大丈夫だろうか、この店。