逸人がかけてくるなんて珍しいな、と思いながら、スマホに出たあとで、ハッとした。

 まさか、圭太め。
 錯乱したまま、逸人にまで同じことを言ったとか?

『芽以と結婚してやってくれっ』
とあの勢いで言って、クールな弟に追い返される圭太の姿がリアルに頭に浮かぶ。

 すると、案の定、
『さっき、圭太から電話があって、お前と結婚しろと言ってきたぞ』
と逸人が言ってきた。

 しかし、相変わらずだな、と芽以は思う。

 『もしもし』も、『こんばんは』もないのか。

 逸人は大抵、なんの前置きもなく、しゃべり出す。

 そして、言いたいだけ言って切るのだ。

 気配りの男と言われる圭太とは対照的な男だった。