芽以は圭太を好きなはずだ。
全国模試で、全科目トータルで、偏差値84出したときも、思い上がって気を抜いたら、78まで落ちていった。
芽以が俺を好きとか思い上がってはいかん。
なまはげが来る……と逸人は思っていた。
こんなに思い上がっていたら、きっと、俺を戒いましめに、なまはげが来る。
だが、遠く離れた物陰から、チラッとこちらを見ているのは、なまはげではなく、芽以だった。
隠れて見ている芽以に、自分を戒めるため、頭の中で、なまはげの扮装をさせてみる。
だが、よく、箸が転んでもおかしい年頃とか言うが。
今は、なまはげを着ても可愛い時期というか。
藁を着て、お面をかぶって、包丁つかんでいても、芽以なら、やっぱり可愛いだろうと思ってしまう。
「相当、錯乱してるわね……」
と日向子や砂羽に言われそうだ、と思いながら、逸人は心を落ち着けるために厨房を磨いた。