「お前のように、パクチーとコリアンダーが一緒だと知らない人間も居るから、わかりやすいように、phakchiにしたんだが」
と逸人は言うが、

 ……いや、そんな人はきっと、パクチー食べに来ませんよ、と芽以は思っていた。

 流行りに乗って食べにきただけの人は、きっと、ゲーしますよ、と思っていると、逸人は、
「それにしても、よく迷わず来れたな」
と子どもに言うように芽以に言ってくる。

 幼なじみなので、芽以が方向音痴なことはよくご存知だ。

「あ、はい。
 バス停の目の前だったので。

 メモもばっちり書いときましたし」
とポケットをがそごそやって取り出したメモを笑顔でかかげると、

「芽以……。
 なんて書いてあるんだ」
と逸人は言ってきた。

 目を細めているので、おや? この人、目が悪かったろうか、と思ったのだが。

 逸人は渋い顔で、
「解読しろ」
と言ってきた。