今、気がついた。

 あまりの忙しさと、怒涛の展開によるショックで忘れていたが、結婚するというのに、逸人の両親に挨拶に行っていない。

「来なくていい。

 ……わかった。
 だったら、姉貴よこして」

 じゃあ、と不機嫌に逸人は電話を切った。

 そのままなにも言わないのかと思ったが、逸人は鍋を見たまま、
「親ってのは、なんで、ああ莫迦なんだ」
と言ってくる。

 いや、独り言か?

 聞いていていいのだろうか、と思いながら、なにも言わないでいると、逸人はこちらを見た。

 ……だから、そのまっすぐな目、やめてください、と思う芽以に向かい、逸人は言ってきた。

「年末年始に帰ってこないなんて、みんなが圭太の結婚にばかり夢中なんで、拗ねてるのかとか言ってきやがった。
 俺は子どもか?」

 いやまあ、親にとっては、子どもは幾つになっても、子どものようですからねー、と芽以は苦笑いして、その言葉を聞いていた。