「澤口?」

「あぁ。悪い。寝てた?」

「寝てた?って。
 最初から最後までよく寝てた。」

 お陰で映画には集中できてありがたかったけど。

 スクリーン前の座席には私達以外にあと数名しか残っていない。
 清掃の人も入ってきて、まだ眠そうな澤口を急かすように外へ出た。

 改めて伸びをした澤口が私へ質問を向けた。

「食事、どうする?」

 もうかなり遅い。

 映画の時間をチェックした時に急げば間に合うからと、食事を後回しにした。
 その時でさえ夕食を食べるには遅いくらいで、今なんて夜食でも遅いくらいだ。

「なんだか時期を逃したら空腹もどっか行っちゃったわ。」

「そ?なら。もういっか?」

 一人暮らししていると、面倒で夕食を食べずに寝てしまうことも多々あって、適当でダメだなぁと思っていた。
 澤口も案外、そういうタイプなのかもしれない。

 そういうことなら食事はいいとして。

 今日は金曜日だ。
 どことなくこのあとどうするんだろうって思うのは、何も期待してるわけじゃない。

 いい大人がカマトトぶって何もないと思ってました。なんて言えない。