「幾田さんを自殺に追い込んだのも、こんな予告動画が始まったのも、そうやって笑いながら幾田さんのことをバカにしてきたのが原因だってまだ分からないの?」


あの頃の幾田さんは物みたいに扱われてた。だから揺さぶっても壊しても平気だって感覚が麻痺していて加減を忘れてた。


もし、私が幾田さんでも堪えきれずに屋上から飛び降りていたと思う。


なのに、私たちは誰ひとり、幾田さんの死からなにも学ばなかった。



『可哀想だけど自分のことじゃないし』
『いじめがバレなくてラッキー』
『っていうか、幾田のメンタルの弱さが問題でしょ』
『考えてみればそんなにひどいことをしたわけでもないし』


ああだこうだと理由をつけて、30人から29人になった教室も、ずっと空席になっていた幾田さんの席も全部見ないふりをして、彼女のローカーはいつの間にか誰でも荷物を入れていい場所になってた。


そうやって幾田さんなんかいなかったことにしようって、みんなが忘れていくたびに、私たちは何度も何度も幾田さんのことを殺していたんだ。


みんながその罪を認めなければいけない。

なかったことにしてはいけない。


なのに、まだこんなにも自覚していない人たちがいる。