「おい、こっちに向けんなって」

「あはは、ウケるー!」


なんでこんな時にはしゃぐことができるんだろう。危機感がないというより、この非日常を楽しんでいるようにも見える。


「つーかさ、幾田の顔久しぶりに見たけど、相変わらずキモかったな」

手持ち花火を振り回している森元が言う。



「あー分かる。動画よりも吐き気したもん。生理的に受け付けないんだよね、ああいう顔の人って」

「私も速攻、スマホ閉じたよ。夢に出てきそうで」

「一回死んでるなら少しは神様に顔を直してもらえばよかったのにね」

「ぷっ、女子ってこえー」



畑さんの言葉に仲谷さんと磯山さんが乗っかり、武政と井口がゲラゲラと笑っていた。



沸々と込み上げてきているのは怒り。


今まで何度も神経を疑う言動はいくつもあったけど、こういう人たちだから仕方ないって無視してた。


でも、もう限界だ。


クラスメイトたちが誰ひとりとして意見を言えないのなら私が言う。



「ねえ、もうそういうのやめない?」


「……は?」


薄ピンク色の花火がジリジリと消える。それと同時に私を睨んだのは畑さんだった。