「クラス替えが一回しかなかったから3年間同じクラスだった。それでクラス全員の人と連絡先を交換する機会があったからそれで知ってただけ。当時から接点はなかったよ」
「……そうだったんだ。幾田さんって中学の頃はどんな感じだったの?」
「当時から大人しくて、目立つ人にいじめられた。そのたびによくトイレで泣いてたけど、私はあんまり詳しくない」
「……そっか」
中学校でもいじめられていて、高校でも標的にされてしまった幾田さんの気持ちは私には分からない。
たまにいじめはいじめられる側にも責任がある、なんて言う人がいるけど、それは違う。
たしかにコミュニケーション能力、対応力、協調性は目立つ人に比べたら劣って見えるかもしれない。
でも、だからって差別していじめていいことにはならない。絶対に。
「じゃあ、私、こっちだから」
前園さんが分かれ道の右側を指さした。
「え、あ、うん。またあし……」
〝明日〟と言いかけて唇が止まる。
学校が再開する目処はまだ立っていないし、こんな状況で明日という言葉を使うのは不謹慎な気がした。
「気を付けてね」
そう言い変えると、前園さんはニコリと笑う。スタスタと暗闇に消えていく彼女の背中を見ながら、「……前園さんっ!!」と、私は名前を呼んでいた。
「どうしたの?」
数メートル先で、前園さんが振り向く。
「わ、私たち今まで喋ったことなかったけどまた話そう!」
なんとなく、前園さんにはそういう感情が芽生えた。
「うん。そうだね。木崎さんも家まで気を付けて帰ってね」
「ありがとう」
そして、私は前園さんと別れた。



