「私は小さい頃から引っ込み思案で、透子がいないとなにもできないような子どもだった。そんな内気な性格が祟って、小学校から中学校までいじめられてたんだ」
前園さん手すりに寄りかかりながら、遠い瞳で夜空を見上げた。
「透子は私といることで悪口を言われても私から離れることなく一緒にいてくれたの。だから、高校では負担にならないようにしようって。変わろうと思ってダイエットをしたり、見た目を派手にしたりして努力した」
「………」
「その結果、私は入学式の日に唯菜に声をかけられて、歩実たちとも仲よくなった。透子はよかったねって言ってくれた。明恵に友達が出来て嬉しいって。私も負けないように友達をたくさん作らなきゃって笑ってた」
「でもあの日……」と、言葉の続きを言いかけて前園さんは躊躇する。けれど、すぐに唇は息をはくように動いた。
「でも、あの日。高野が透子のことをからかったことで、唯菜たちも透子に目をつけるようになった。私が幼なじみなんて知らずに、透子の悪口を言ったり、物を盗めと誰かに命令したり……。私が小学校から受けていたいじめを、今度は透子がされるようになったんだ」
まさかふたりがそんな関係だったなんて……。
そういえば以前、前園さんに幾田さんのことを聞いた時、こんなことを言っていた。
幾田さんは中学の時から大人しくて、目立つ人にいじめられた、と。それで、そのたびによくトイレで泣いていたって。
もしかしたらそれは、幾田さんのことじゃなくて、昔の前園さんのことだったのかもしれない。



