森元のことは拒否しないのに、私の言葉は簡単に突っぱねられてしまう。

また、モヤモヤした感情。だから止まらない。



「そうやってまた隠すんだね。理由が分からないと森元を庇ってるみたいに見えるよ」


ダメだって分かってるのに、唇が勝手に動く。



「私は正直、森元が動画を再生してる人物だって考えてる。だから森元を庇うようなことをすると……」


ハッと、気づいた時には遅くて、ちづはとても険しい表情をしていた。



「すると、なに?私も共犯なんじゃないかって?」

「ち、違うよ」

「今の言い方は絶対そうだった!」


共犯、なんて思ってない。

でも、信じられなくなってることは事実。



「……じゃあ、なんで前園さんが幾田さんの自殺の動画を消そうとした時に止めたの?そういう不自然なところを話してくれないと分からないよ」


ひとつひとつが怪しく見えてしまう今、ひとつひとつの誤解を解いていかないと、どんどん嫌な考えばかりが頭に浮かんでしまう。



「私にだって言いたくないことぐらいある」

ちづはそう言って、ベンチから腰を上げた。



「待ってよ、ちづ……!」


ちづは私の呼び掛けに一度も振り向かなかった。



……ああ、崩れていく。なにもかも。


私はぐしゃりと、頭を抱える。地面に映った影が、さっき粉々に潰してしまったセミの脱け殻に似てる気がした。