幾田さんへのいじめは言葉では語れないほど、ひどいものだった。
机や椅子が廊下に出されたり、持ち物を隠されることは序の口で。男子はえげつない言葉で罵り、女子は加工アプリで幾田さんを撮してはゲラゲラと笑い、おもちゃのように遊んでた。
それだけじゃない。
幾田さんが歩けば足を引っ掛けてわざと転ばせて。その姿をスマホで撮影してみんなで共有。
幾田さんが横を通るだけで『なんか臭い』と騒いでは、彼女自身をバイ菌のように扱っていた。
味方も誰もいない教室で、鈴木先生も見てみぬふり。『ほどほどにしとけよ』なんて言うだけで、幾田さんを助けようとはしなかった。
けれど、幾田さんは学校を休むことはなかった。
きっといじめのことを家の人に言えずにいたのだろう。
幾田さんは二か月間、そんな環境をひとりで耐え続けていた。……でも。
『早く死ねよ。つか、生きてる意味とかあんの?』
麻生さんがいつものように高笑いをしながら言った次の日。
どんなことがあっても学校を休まなかった幾田さんの席が空席になっていた。
そして朝のホームルームがはじまり、鈴木先生は神妙な顔つきで私たちにこう告げた。
『昨日の放課後、幾田が学校の屋上から飛び降りました』



