「……ねえ、あれって」


ゲームセンターを出て、移動販売車のクレープ屋でそれぞれ好きなものを頼んで歩いていると、ちづが前方を指さした。


そこにいたのは、武政と井口だった。



ふたりはなにをしてるわけでもなく、アーケード街の中にあるベンチに腰かけていた。

おそらく私たちと同じ理由で家にいても落ち着かないからと外に出てきたのだと思う。


武政と井口はすぐに私たちのことに気づいた。そして手に持っていたクレープを見るなり、呆れた表情を浮かべる。



「予告されてないヤツは呑気でいいな」


武政の皮肉まじりの言葉に、私の眉がピクリと上がる。



たしかに武政と井口からしたら、いつ予告が実行されるか分からない不安でクレープなんて買ってる場合じゃないだろう。

けれど、私たちだってなにも考えずに呑気でいるわけじゃない。



本当は怖いし、予告動画のことだって片時も頭から離れないけど、それでも非日常的な毎日から一瞬でも解放されたいという願いはある。



「……森元はどうしたの?」


前園さんが武政たちに尋ねた。