その帰り道。私はちづと星ひとつ出ていない夜空の下を歩いていた。



「……ねえ、あず。今日このままあずの家に行ってもいい?なんか一瞬でもひとりでいるのが怖くて……」

公園にいる時からちづが震えていたことには気づいていた。


「うん。泊まっていきな」


私はそっと小さな肩を抱く。ちづはきっと夜もあまり眠れていないのだろう。なんだかずいぶんとやつれてしまった気がする。


「……私、あずに隠してたことがあるの」

ちづがぽつりと呟いた。


「なに……?」

「これ」


そう言ってちづはコートのポケットからなにかを取り出した。

暗くて見えづらいけど、わずかに灯る外灯で映し出されたちづの手のひら。そこには、見覚えのあるうさぎのクリップが。



「え、これって幾田さんのじゃ……」

「うん。ラインのアイコンにしてるやつ」


可愛らしいうさぎのクリップは予告動画と一緒に表示されるため私の中ではもう恐怖しかなくて、この円らな瞳でさえゾクッとしてしまう。