呼び出し音のメロディーは無限にリピートされるかと思った。


予想に反し、音が急に止まった。


緊張感に包まれ、息をのんだ。



『綾? どうしたの?』



いつもの彼の声が体へ侵入してくる。涙が出そうになる。



「……優にぃ、会いたいよぉ」



そう伝えると、一瞬沈黙があった後、ぼそりとした声が聞こえた。



『待ってて。また連絡する』



そのまま通話は途切れ、その代わりメッセージが届いた。



『駅裏の公園で。すぐ行くから』



優にぃと会えるんだ。


ありがたい気持ちと申し訳なさが重なり、鼓動が早まった。




改札からは、雪崩のようにサラリーマンや学生が次々吐き出されていく。


下を向きながら駅の連絡通路を抜け、裏側へと急いだ。



知っている人に会うかもしれない。


誰かに見られたかもしれない。


そんな心配は、彼の姿を見たら一気に吹っ飛んでしまった。



「優にぃ!」



部活帰りだったのか、優にぃは学校名入りのジャージにリュック姿。


わたしは制服姿。


お互い私服じゃないのは初めてで、不思議な感じがした。



「とりあえず、あっち行こ」



彼は駅からの人の流れをチラッと見てから、公園の奥へとわたしをうながした。