結局、スカートじゃなくてTシャツを1枚買って店を出た。
「優にぃは高校、楽しい?」
「楽しい時もあるし、全部どうでもよくなる時もある。たぶん普通」
「そっか。そういうの、普通なのかなぁ」
歩行者信号が赤になり、優にぃと2人、流れる車を眺める。
次第に横や後ろにどんどん人が増えていく。
「綾は、なんで学校楽しくないの?」
「なんでって言われると……いろいろあってよく分かんない。全部足して割ったら、答えは"嫌だなぁ"って感じ」
手にした買い物袋をぎゅっと握り、そう答えた。
「それ、なんとなくわかるかも」と優にぃはつぶやいた。
「でも優にぃといるの楽しいから、それも足して割ったらプラマイゼロになるよ!」
そう伝え、優にぃを見上げた。
今一緒にいることの楽しさが、表情から漏れたかもしれない。
信号が青になる。まわりの人たちがいっせいに動き出す。
「まだプラマイゼロかぁ。じゃあプラスにできるよう俺、もっと頑張んなきゃな」
優にぃは流し目で微笑みながらそう言った。
嬉しくて、ほころんだ顔がバレないよう、彼の後ろをついていった。
それから、カラオケに行ったり、雑貨を見たり、優にぃのスニーカー選びに付き合ったり、楽しい時間を過ごした。