わたしたちは同じお母さんとお父さんのもとで生まれたという共通点があるだけの、1人1人の人間だ。



お母さんは今、何に悲しんでいるのだろう。


世間様に顔向け？　それって誰のため？　自分を守るため？



確かに、血のつながった兄妹は結婚することができない。


子どもを作るのにもリスクが高いという。



それくらいわたしだって調べている。



お母さんを悲しませていることには、もちろん罪悪感はあるけれど。


わたしは他人に認められるために恋をしているわけじゃない。


自分が大好きだと思える人と一緒にいたいだけ。


そこに、世間なんて要素は必要ない。



優にぃもまた、お母さんを複雑な表情で見つめていた。



「別に許してもらおうなんて思ってないっすけど。自分の体裁守りたいだけって感じっすね」



あきれた口調でそう口にする優にぃもまた、お母さんの子どもだ。


かつてお母さんによって心を傷つけられた、わたしのたった1人の兄だ。



なのに――



「綾。二度と会わないって誓いなさい」



お母さんは優にぃを全く見ようとしない。


わたしだけに話しかけてくる。そんなのずるい。ひどい。