「俺、綾ちゃんの過去知って、もっと守りたいって気持ち強くなってる。俺といれば、綾ちゃんは寂しい思いすることないよ?」


「べ、別に寂しいとか思ってないし」


「遠慮しなくていいよ。もっと甘えてほしい」


「だから別れようって!」



思わず大声を上げてしまう。


ぴたっと川瀬くんの動きが止まった。



雑草の奥、すすきがそよそよと風になびいている。とんぼが2、3宙に浮いていた。



――川瀬くんの気持ちは嬉しい。その分、想いに応えられていないことが申し訳ない。


このまま付き合い続けても川瀬くんを傷つけるだけ。だから別れよう。



「あの……えっと……」



言いたいことはまとめてきたのに。


昔から自分の気持ちを口にすることが苦手だったわたし。すぐには切り出せない。



いったん、深呼吸をして息を整える。


そして、理由を伝えよう、と息を吸いこんだ時。



「嘘でしょ」



ぽつり、川瀬くんが言葉をこぼした。


目はうつろで、顔は青ざめている。



川瀬くん? と声をかける前に肩が強くつかまれた。



「なあ、嘘だよな。俺こんなに綾ちゃんが好きなのに!」


「……つっ!」


「じゃあ何で付き合ったんだよ!」



顔を真っ赤にして、彼は怒り出した。


無理はない。


付き合ったら好きになるかも。優にぃを忘れられるかも。


そう希望をもって、わたしは彼からの告白にOKをしたのだから。