「映画、面白かったね。なんか目が回ったけど」


「や~すごい迫力だった。てか綾、爆発シーンで超ビビってたでしょ」



優にぃが見たかったらしいアクション映画を楽しんだ後は、かわいいカフェに入りケーキを注文。


まわりは女子グループかカップルばかり。


わたしも少しはおしゃれしたし、優にぃかっこいいし、わたしたちも景色に溶け込んでいるはず。


そのことが少し嬉しかった。



「優にぃ、高校はどこ行ってるの?」


「A北」


「へぇ、結構遠くない?」


「まあね。バスケそこそこ強いから」


「バスケ続けてるんだ!」


「うん。まわり上手いし、俺なんて全然ダメだけど」


「そんなことないよ。わたし1回しか試合見てないけど、優にぃすごかったじゃん!」



1回だけ、お父さんと一緒に彼の試合を見たことがある。


スピードに乗ってボールを受け取り、シュートを決めた姿にめちゃくちゃテンションが上がった。


優にぃはわたしと違って、昔から運動神経が良かった。


その代わり、学校の成績はいまいち。わたしとは真逆。



「いただきまーす!」



ミルクレープを縦に割り、一口食べる。


頬をおさえ、おいしい~とこぼすと、優にぃが真面目な顔になった。



「綾は? 学校どう?」


「ん? 楽しいよ。クラス替えあったけど新しい友達できたし、部活忙しいけど成績はなんとか保ってるし。もうすぐ体育祭があってどうしようって思ってるけど、友達と同じ競技選ぼうって約束したから大丈夫そうだし」


「へぇ」


「スマホ買ったから早くみんなとラインしたいなぁって思ってるし、夏休みどうしようかって話もみんなとしてるし、あと、えーと……」


「…………」


「うん、とにかく楽しいっていうか、その……」



嘘をつき続けようと頑張ったが、ダメだった。


優にぃがまっすぐわたしを見つめているから。


全部、見透かされている気がした。