「あー疲れた。帰ろう」
「重い~。大和くんこれ持って」
「って、これお前が買い物したやつじゃん!」
――あ!
店を出てすぐのことだった。
人混みの奥、再び、この前と同じシルエットの男子を見つけた。
「綾ちゃん?」
まさか。優にぃがここにいるわけない。しかもおしゃれな女子と一緒に歩いているし。
歩行者信号は、赤。
前を歩いていたその彼は、足を止める。
隣にいる女子は彼女なのか、楽しそうにその彼に話しかけている。
足が自然と動いた。
怖そうなおにいさん、若いカップル、部活帰りの高校生、おばさん軍団。
それらをすり抜け、少しずつその彼へと近づく。
人と人の隙間から、彼の姿がはっきり見えた。
前よりも少し伸びた髪、きれいな横顔。
きれいめに着こなした薄手のマウンテンパーカー、黒いリュック。
鼓動が早まる。
わたしが彼を見間違うはずがない。
絶対に、優にぃだ!
信号が青になる。いっせいにまわりの人が動き出す。
たくさんの体や頭がわたしの視界をふさいでいく。
どうしよう! 見失っちゃう!
「優にぃ!」
届け! と思いながら、大声で彼を呼んだ。
逆側からの人混みに飲まれそうになった時、その彼は振り返った。

