「久しぶり。迷わなかった?」


「迷わないよー。家から一本だし」


「そっか。えらいえらい」



子ども扱いされたことにふてくされつつも、優にぃをじっと見つめた。



お~、やっぱりイケメンになってるー!



存在感のある黒目がちな目や、幅の狭い涙袋、形のきれいな鼻、口角が軽く上がった唇。


顔の輪郭や首元が男の人っぽくなって、ボーダーTにカーディガン、黒スキニーというシンプルな服装が似合っている。



「優にぃ、背、伸びたね」



右手を伸ばす。ぴんと肘をはらないと優にぃの頭に届かない。



「んーでも、バスケ部だと小さい方だよ」


「お~まだバスケやってるんだ!」


「綾も大きくなった? 普通に中学生っぽい」


「ちょ、普通に中学生ですから」



中学生っぽいっていう言葉に物足りなさを感じ、頬を膨らませた。


そんなわたしに構わず、どこ行こうか、と優にぃは目を合わせてきた。



「せっかくここお店とかいっぱいあるし、買い物とか映画とか行きたい。待って、甘いもの食べたいかも。そうだ、プリも撮ろうよ!」



もともとこういう遊びに興味はないはずだった。


休日にクラスメイトと遊ぶこともほとんどなかった。


なのに、優にぃを目の前にすると、やりたいことが次々あふれ出してきた。ついでにテンションもおかしくなる。



優にぃは多いなぁと苦笑いした後、


「じゃあ今日は映画と甘いものでどう?」と提案してくれた。



「うん!」



嬉しくて、軽く飛び跳ねながら優にぃの後ろをついていった。



『今日は』って言ってくれた。


きっと、次もあるんだ。