ある日、起きたらお父さんと優にぃはもういなかった。
泣いてもわめいても、その事実は変わらなかった。
『綾、お母さんと2人で頑張っていこう』
『なんでわたししかいないの? 嫌だ! 嫌だ!』
『事情が変わったの。これはあの子も望んだことなの。綾、わかってくれる?』
それからしばらくわたしは誰とも会話できなかった。
お父さんも優にぃも失って、誰を信じたらいいか分からなくなった。
お母さんはしばらく学校を休ませてくれた。
家で本を読んだり、家事をしたりして時間を過ごした。
『綾、まだ学校行けない? 勉強ついていけなくなるよ』
1週間ほど経ってから、恐る恐るお母さんは、わたしの部屋に入ってきた。
『お父さんと優にぃに会いたい』
『あの2人はもう家族じゃないの』
『どうして優にぃも出ていっちゃったの?』
『それは、前にも言ったけど、優が望んだことで……』
『お母さんは優にぃのこといらなかったの? わたしもいつかいらない子になっちゃうの? だったらわたしもお父さんのとこに行かせて!』
泣きながら大声でお母さんに詰め寄った。
お母さんは、はっとした顔になった後、その場で泣き崩れた。
『優も、綾も、お母さんの大切な子どもよ。でもお互いのためにこうするしかなかったの』
『…………』
『綾が不自由しないよう、お母さん一生懸命やるから。お母さんと一緒にいてくれる? 綾を失ったらお母さん、もうどうしたらいいか……』