俺たちが、応接間に入ると、程なく、父が現れた。

結は立ち上がって、会釈をする。

「父さん、こちら、伊藤結さん。
俺が結婚したい人。
結、これがうちの父。」

俺が紹介すると、結が挨拶をする。

「伊藤結です。はじめまして。」

「海翔の父です。はじめまして。
まあ、お掛けください。」

と父が促す。

「実は、結のお腹には、俺の子がいるんだ。」

と電話で伝えていた事を改めて説明すると、

「本当に申し訳ありません。
結婚前のお嬢さんにこのような事。」

と父は結に謝罪した。

「いえ。」

結は、それ以上、多くは語らなかった。


両親は、結を歓迎したし、結婚も妊娠も喜んでいた。

結婚式も8月に出来そうな所を幾つか当たってくれるとの事だった。

俺たちの結婚に向けて、全てが動き出したはずだった。

なのに、俺は、なんでこんなに不安なんだろう。

隣に結がいるのに、結が遠くへ行ってしまった感覚がある。

結、どうした?

俺は、どうすればいい?