「あのぅ、ちょっとすみません」
「ん……?」
思いきって声をかけて見たものの、生返事が返るだけで要領を得ない。
これは生半可では起きないな、と語気を強める。
「ちょっと、すいません!」
「……ん」
「ちょっと!!」
結構強めにいっているのに、起きやしない。
こんな耳元で大声を出しているのにまったくもって起きないよこの人。
どうしたものだろう?
お店の裏とは言え、こんなところに居座られたら迷惑だ。
少々途方に暮れていると、ガチャリ、と音がして光の射すドアの向こうから店長がひょっこりと顔を覗かせた。
「佐川さん?」
聞きなれた声に呼び掛けられて、慌てる。
別に私は悪いことしてないのに。
この人が見つかりやしないか内心でドキドキしながら「は、はい?」なんて声が若干ひきつった。
わざとらしいにも程がある。
「……何してるの?」
「あ、いや……?ちょっと」
当然のごとく突っ込みが来て、それはそうですよね!などと思いつつもうまい言い訳のひとつも見つからない。
じとーっとした目が痛い。
見られてる。
大いに見られている。
けれどもその瞳は私の顔を観察するばかりで、どうやら後ろのその人は目に入らなかったらしい。
諦めたように店長は観察するのをやめた。
「……ま、良いや。ゴミ出したら時間だからもう上がってね」
「はい」
業務連絡に相槌をうち、ガチャリと閉じた扉を確認して胸を撫で下ろした。
別に見つかったところで私には関係無いはずなのに……
改めて、その人に目を向ける。
ゴミ箱にもたれかかってすやすやと眠るこの人。



