顔をあげると、

いつの間にか燐がしゃがんでいた。


同じ目線の燐。


笑っているが。笑っていない。


燐が、“女嫌い”……だと?


「そんな話、信じられるか」


だってお前は。好きだろ。

いつも――。


「うざいくらい女子のハナシしてるだろ」

「頭つかわずにできるからねー」

「“お姉さん”とのデート邪魔されたら怒るじゃねぇか」

「仕事の邪魔されて怒らない人いるー?」

「仕事って……」

「ビジネスなんだよ、愁。ホストがお客の前で“あなただけの王子様”を演じるように、ボクもそうしてるだけ」


なにがビジネスだ。なにが王子様だ。


「お前の日常。全部そうだって言いたいのかよ」

「そうさ」

「狂った野郎だとは思ってたが。そこまでだったとはな」

「言ったでしょ。どうでもいいものにだって。苦手にだって触れるようにしてるって」


それが、お前の、本当の気持ちだとして。


嫌いな女性に笑顔をふりまくのだとして。


――なんのために?


自己犠牲して。


相手の気持ち、ないがしろにして。


……そんなことして、なんになるんだよ。


なあ、燐。


「金のためか?……なにか、金が必要な理由でもあるのか」

「お金はいくらでもあればいいよね。不自由しないし。なんでも手に入るし」

「入らない」

「ボクの欲しいものはお金で買えるものだけだから。なんだって手に入るよ」

「……そんな寂しいこと言うなよ、燐」