「ところでさ。今日の“オレ”どう思う」

「……は?」

「似せてみたんだよね。雰囲気。タレ目メイクもそうだし。テーマをつけるなら、ズバリ“愛されウサギ系カノジョ”」


胸がざわつく。

少し離れた賑やかな通路からざわつく客の声が聞こえてくるが、なぜか別世界のようにそこが遠く感じた。


「この姿でキミの前に現れたとき。キミは目を見開き驚いた顔をしていたね。どうしてかな?」


【お待たせ】


――長い黒髪が、そこにいるはずのない、あの子みたいだなと思った。


背丈はおろか、ふと見せる仕草や表情が

どこかあの子をチラつかせた。


なにも燐のせい、というわけじゃない。


ここ数日、ずっとそうだ。


――俺は気づくとユウのことを考えている。


退屈な学校で優等生演じているときも。

通学中も。


夜、眠りにつくときも。


無意識のうちに

俺の頭の片隅に、ユウがいた。


「ねえ、愁。キミはユウちゃんのことを妹だなんて思っていないんじゃないの?」


耳元で囁かれた声は、悪魔の囁きのようで。


「違う。俺は――」

「知ってる? こういう気持ちってさ。気づいたが最後なんだ。どんどん加速して。止めたくて止められるものじゃなくなる」


俺の中に黒く渦巻く感情を、呼び起こす。


「認めちゃいなよ」

「っ、なに言って――」