「……なあ。お前ニートでいるつもりか?」

「お金あるのに働く理由ある?」

「貧乏になったとかほざいてたのは」

「これまでの暮らしに比べたらはるかにビンボーになったよ。しばらくは貯金だけで生活できる」

「しばらくって……どんくらいだよ」

「受験資格は抜きで。苦労なく大学に六年間通えるくらいの環境は整えられるかな」

「……えげつねぇな。やっぱり家賃請求してやる」

「えー。こんなに可愛いカノジョにそんなこというの? 愁くんの、キチクー!」

「いつから彼女んなった」


六年間?


「愁さん。大学って、4年じゃないんですか」

「たしかに四年制が多いが、短期大学だと二年、医大だと六年だったりするな。大学院へ進むという道もある。もっとも単位落としてストレートに進級できず留年したら長引くが」

「なるほど」

「つまり、そいつは居候の分際で医学部に苦労なく通える貯金があるんだとよ」

「そうなんですか」

「ところでお前、銀行口座持ってんのか? うちに現ナマ置いとくなよ」

「持ってるよ。いくつか」

「……そんなのは作れんのか」

「作ったというか。まあ。買ったんだけど」

「聞かなかったことにする」