午後になって、

いよいよ本格的に暴風域にはいると

窓がガタガタと音を立てているし

マンションの上階なので、揺れも感じる。


午前中で仕事を切り上げると言っていた幻さんから、連絡がない。


いや、連絡するとは言われていないけれど。


心配だなぁ。

無事に家に帰れたかな?


あの家の屋根……

飛んでいったりしないよね?


「オッサンとこの店。大丈夫かよ」


お昼ご飯を食べに部屋から出てきた愁さんが、同じことを考えていた。


「寝てたのー?」

「ああ。少し仮眠とってたが……って、なんでわかった?」

「寝癖ついてるし。メガネかけたまま寝たでしょ。ヘンな跡ついてるよ」

「……マジか。まあ、なんでもいいけど」

「そんなんだから彼女できないんだよ」

「うるせぇ。できるときになったら、できるわ」

「ユウちゃんからも、言ってやってよ。だらしないって」


(わたしから……ですか!?)


愁さんと、目が合う。


「いえ、わたしは……おうちでまで気を張る必要ないと思います。学生モードのときも、夜も、別の意味で愁さんにはキャラがあって。自宅でくらいは、完全に気を緩めていた方がいいかなって。思います」

「……嫁にしたい」

「愁、本音漏れてるよ。幻に聞かれたらコロされるよ」

「ハッ……俺は、今なにを……」

「はあ。天然たらし炸裂なんだから、ユウちゃんは」


たらし!?


「カワイソウな愁くん。午後は机に向かわずにさ。ひと息ついたら? ボクが可愛がってあげるよ」